【読書】プロがやっている これだけ! 会計&会社分析
こんにちは。Soysanです
昨年購入した会計・会社分析の入門本を再度読み直し、そのエッセンスに基づいてJSR株式会社の財務諸表をチェックしました。
本の紹介
本の概要
タイトル:プロがやっている これだけ! 会計&会社分析
著者:小宮一慶
出版年:2021/5/17
発行:日経BP
どのような本?
本書より引用
所感
財務諸表の簡単の見方や3表の関連性というのは様々な入門書やウェブ上で紹介されていますが、本書は財務諸表が示す諸々の経営指標を経営者、企業価値評価の目線からどのように読み解いてあげればいいのかを平易に説明してくれる本です。
なんとなく財務諸表の意味はわかっているけど、その数値をどのように読み解いていけばいいのか、その取り掛かり方をつかむのに適した本だなという印象を受けました。
実際の財務諸表をチェックしてみる
本書が指し示す通りに実際の財務諸表を見てみました。
題材としては合成ゴムを創業事業として、近年は半導体材料で大きなシェアを有するJSR株式会社4年分(2018-2021)の決算短信を扱います。 まずは経営指標を抽出していくために、JSRの財務諸表からいくつかの項目を抽出しました。
~賃借対照表より~
まずは賃借対照表の値を使って直近、短期、中期での財務の安定性を確かめます。
直近の資金流動性に問題がないか
- 手元流動性 = (現預金+有価証券) ÷ 月商
※月商 = 売上高 ÷ 12
1年間の資金流動性に問題がないか
中期的に資金流動性に問題がないか
- 自己資本比率 = 純資産 ÷ 資産
これらの指標の過去4年分の結果がこちらの図になります。
手元流動性は2018年から2019年で4→2倍に減少している事がわかります。要因としては「現金及び現金同等物」が540億円程度減少していることが効いているようです。ただ、本書内での指標となっている「大企業の場合月商の1ヶ月分」を十分満たしているため、問題ないと言えそうです。
次で、流動比率については2倍前後を推移、自己資本比率は4年かけて4倍から3倍程度へと減少しています。 流動比率は1.2倍を超えていることから1年スパンで見てもおよそ問題ないといえます。
自己資本比率は大きな変動がないとも言えますし、年々減少しているとも言えそうです。 22年3月期の決算短信ではこの傾向が変化するのか、しないのか、着目する必要がありそうです。
次に損益計算書の値に基づく指標も4期分確認していきます。
売上原価率 = 売上原価 ÷ 売上高
売上原価率の値だけを鵜呑みにするのではなく、翌年の棚卸資産も確認します。 (売上原価率が低いことは評価できるが、それにより翌年棚卸資産が増加しているようであればリスクとなりうるため)
資産回転率 = 売上高 ÷ 資産
資産回転率が高いほど資産を効率的に利益に変えているといえますが、裏返すと資金的な参入障壁が低いともいえます。
売り上げ原価率は70%前後で推移、一方棚卸資産の前年からの増減は2018→2019年で300億円増加、2019年→2021年は連続して減少しております。
2018年の売上原価が相対的に低いですね。結果的に翌年の棚卸資産が増加しております。 資本回転率は大きく変動せず66%から72%を推移しております。
参入障壁の高さを資産回転率から推測することが可能ですが、他の会社、業界とも比較してみないとコメントできないところではあります。
2021年のこれらの経営指標は、2018~2020年までの傾向から大きく変わらないと考えて良いのではないでしょうか。
最後にCFマージンと会社の投資姿勢です。
CFマージン = 営業CF ÷ 売上高
本によると7%以上というのが一つ安定している指標となります。 2019年に7%を下回っていますが、その後回復傾向にあります。
最後に減価償却費と有形固定資産投資額の比較です。
有形固定資産投資額 = - (有形固定資産の取得支出 - 有形固定資産の売却収入)
事業を維持するのに必要な設備費用(減価償却費)に対してそれ以上の強気の投資をしているのか、もしくは現状維持だけなのかというのを有形固定資産への投資額から判定します。
結論としましては、コロナ禍前における減価償却費+150億円程度の有形固定資産投資額を2020年以降も維持しているといえます。(2021年は200億円以上まで増額)
強気な投資を継続しているといえます。
気になった点
・何故2019年にキャッシュが増加しているのか
→要因は下記のようです
→自己株式取得は翌年も実施
子会社株式取得が額面としては一番影響度が大きく、ユーエムジー・エービーエス株式会社(ABS樹脂の製造販売会社)の取得によるものです。